国内の製薬会社の数は約1500社にのぼります。その中で大手と呼ばれる会社は33社です。20%を超える売上高経常利益率が示すように収益基盤は安定していました。
それを支えているのが、政府が決定する薬価の公定価格と実勢価格との差です。病院が製薬会社(実際はこの間に薬卸売会社が介在します)に支払う実勢価格は公定価格に比べて相当低いのですが、病院は使用した薬の代金を公定価格で健保など医療保険から受け取ります。
病院は薬を大量投与すれば差額が膨らみ、利益を上げられるため、薬漬け医療との批判を浴びるような薬の大量投与が恒常化しています。こうした薬の大量投与が製薬会社の収益を安定させてきたのです。
しかし、健保などの財政難で医療制度の見直しが開始し、製薬会社の安定した収益基盤が揺さぶられています。
実際、2年毎の薬価見直し(引き下げ)で1992年以降の市場規模は6兆円でゼロ成長状態にあります。製薬会社の安定成長時代にピリオドが打たれたとの見解が出ているほどです。
2002年は薬価改定の年にあたり、4月に平均6.3%の引き下げが実施されました。この影響が各社の業績にどのように出るかが注目されています。
また、大手33社のうち10社の平均売上高は4000億円に過ぎません。一方、欧米各社は1兆円を超えており、大人と子供ほどの差が見られます。厚生労働省がまとめた「医薬産業ビジョン」でもM&A等の戦略的な経営展開による「国際競争力の強化」を求めています。
日本の医薬品市場は世界第2位の規模を誇ります。ここに外資の進出攻勢が激しい理由があります。外資は大量のMR(医薬情報担当者)を動員した物量作戦を展開中であるが、抵抗上、国内企業もMRを大量に増員中です。企業によっては女性の採用が男性を上回るケースもあり、女性に人気の職種になっている点は職業選びの観点からも見逃せないものです。