日本紡績協会、日本化学繊維協会、日本羊毛紡績会、日本アパレル産業協会は2001年3月に「受発注契約の書面化」の方針を打ち出しました。これは書面に基づく公明公正な取引を徹底し、今までの口約束による曖昧な取引の一掃を狙ったものです。
これまでこの業界は中小企業が多いために、企業間の力関係が商慣習をゆがめていました。たとえば、売れ行き見通しが悪くなると、発注分を引き取らなかったり、支払いの遅延は日常茶飯事、契約書さえ存在しないケースが多かったのです。
常識的には今更なことなのですが、国際競争力を弱めたとの反省にたって、商慣習を見直したものです。
このような商慣習を見直すきっかけとなったのがユニクロの誕生によるものでした。ユニクロを展開するファーストリテーリングの低価格攻勢は全品買い取りが契約条件です。中国製タオルに対するセーフガード(緊急輸入制限措置)の発動を要請するまでに追い込まれた競争力の弱体化に直面して、前近代的な商慣習の見直しが不可欠との判断がありました。
しかし、この商慣習の温床となっているのが中小企業が多い業界構造とそれに伴う複雑な流通経路なの」です。したがって商慣習改革の難しさが指摘されています。とはいえ、業界内からも「改革が進行しなければ、市場から淘汰される」との厳しい声が上がっています。
各社は繊維部門の分社化を進めることになりそうです。中国や東南アジアからの低価格品に対抗するためで、分社化、子会社化して機動的に海外生産比率を高めたい考えです。この場合、収益性の高い医薬品や樹脂部門の同時進行的な強化が必要でしょう。子会社同士の企業統合など業界再編成が進みそうです。